香華をたむける
「香華(こうげ)をたむける」という言葉をご存知でしょうか。
亡くなった方を弔う時にお香やお花を供物としてお供えすることを言います。
香華とは文字通りの意味で
「香」とは香料のことあり、
香炉で炊く香木を意味し、
「華」は華(花)のことなのです。
2月12日付ブログ記事「香典」に記載の通り、
現代ではお香の代わりにお金でということのほうが当たり前になっていますが、
もともと仏前に「香華をたむける」のは、ちゃんとした理由があるのです。
それは死者に「香華をたむける」習慣は仏教の発祥の地である
インドから
伝わったからなのです。なぜならば、インドは日本と違い
一年中ひどい猛暑だからなのです。
昔、冷蔵庫もドライアイスもない中では死体はすぐに腐敗し
猛烈な悪臭を放ちます。
それを防ぐために強烈な香料と強い香りを持つ花で悪臭を防ぐ必要が
あったのです。
もちろん、インドでも今ではご遺体保存の技術や設備が進歩しており、
腐敗から来る強烈な悪臭に悩むことはほとんどありませんが、
昔はさぞかし大変なことだったと思います。
ここで注目してほしいのは本来の
お葬式での「お花」の役割は
柩の周りを華やかに飾ることではなく、どちらかといえば
「消臭剤」の役割であったということなのです。
したがって、習慣の発祥の地であるインドでは死者を弔う時にお供えする花は
熱帯の
強烈な匂いを持つ花を使ったのです。
さて、日本では仏前にたむけるお花ででお葬式に必ず無くてはならないお花は
「樒(しきみ)」。
「樒(しきみ)」の実は有毒物質を含み食べれば死亡する可能性がある程度に
有毒であり、葉もオオカミなどの動物が嫌う、独特の匂いがします。
まさに「樒(しきみ)」の特性こそ「香華をたむける」という本来の
使い方なのでしょう。
このことから
「魔よけの花」とも言われます。
現代でも仏式のお葬式の場合は下の写真のように祭壇前の机には必ず、
花(しきみ)と香(線香)と灯り(ロウソク)が
たむけてあります。
獣から死者を守る為に
獣が嫌いな匂いと苦手な火で守る
という古来から伝わる
「弔い」の方法を再現しています。
関連記事