家族葬の増加に伴い、焼香順位を作成せずに喪主様から順番におおよその
血の濃い順番でご焼香されるケースのお葬式のスタイルが増えています。
背景には家族葬だから焼香順位をわざわざ作成して仰々しくしなくても
という想いもあるのでしょうが、現実的には焼香の順番で不手際があり、
揉めたくないという現実があることは事実です。
焼香の順番で揉めないようにと関西地方に昔からある風習として
「止め焼香」という方式があります。
止め焼香とは無用な争いを避けるためにあらかじめ焼香の順序を決めて
おいて、最後に比較的故人に近い立場の親戚が止め焼香を行います。
通常は故人の兄弟である喪主から見て「おじ」「おば」と呼ばれる方や
喪主の兄弟姉妹が最後に焼香をすることが多いのです。
例え焼香の順番などに不備があったとしても近親者もこれだけ待って
最後に焼香をするので焼香順位は不同でお願いしますという意味が
込められているのです。
フューネの本拠のある豊田市エリアでは止め焼香という風習は
ありませんが、ごく稀に関西出身のお客様から「止め焼香をしたい」と
要求されることがあります。
もちろん、お客様の希望ですから私が担当したお葬式でも何回か
止め焼香をしたことがありますが、残念なのは参列している他のお客様は
全く意味が解らず、結果的に意味があったのかと思わずにいられない場面に
何度も立ち会ってきました。葬儀の風習は地域によって異なりますが、
無理に地域外で他の地域の風習を持ちこんでもうまくいかないことの方が
実際には多いのです。もしも他の地域の風習を持ちこむのであれば、
葬儀に参加している方全員に説明する責任があると思います。
現代では関西地方でも止め焼香を行う機会は減っていると聞いています。
やはり、家族葬が増えていることが原因なのでしょうか。
お葬式には古き良き地域の風習というものがたくさんあります。
この風習が消えないように地域の葬送文化を守っていくことも
葬儀社の責務なのです。