殯(もがり)という言葉はご存じですか。
2007年公開された
『殯の森』という映画で覚えている方も
いらっしゃるかと思います。
この映画は第60回カンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールに次ぐ、
審査員特別大賞「グランプリ」を受賞した作品として有名です。
殯(もがり)とは、
日本の古代に行われていた葬儀儀礼で、死者を
本葬するまでのかなり長い期間、棺に遺体を仮安置し、別れを惜しみ、
死者の霊魂を畏れ、かつ慰め、死者の復活を願いつつも遺体の腐敗・
白骨化などの物理的変化を確認することにより、
死者の最終的な「死」を確認すること。
と辞書では解説しています。
『殯の森』という映画では生き残った者と死者との「結び目のような
あわい(間・関係)を描く物語」を目指し映画監督の河瀬直美が
暮らす奈良を舞台に、家族を失った二人の登場人物、認知症の老人と
女性介護士のふれあいを通して人間の生と死を描いた劇映画でした。
殯という日本古来の葬送儀礼では人は亡くなったら喪屋という遺体を
安置しておく小屋を建て、人が死んでもすぐに埋葬したりせず、
長い期間死者を鎮魂していました。場合によっては白骨化するまで
おいていたようです。古事記には殯の記述があり、死者に食事を供し、
死を嘆き悲しみ歌い踊ったということが書いてあります。
どうしてこのようなことをしていたのかという研究は進んでいますが、
一番は昔は現代の医学のように
科学的に死を認定する手法が無かったのです。
つまり、生きているか死んでいるのかということは長い期間の判定が
必要でした。その間はずっとお葬式であり、現代のお葬式は点だと
すれば面で捉えているのが古代のお葬式の考え方です。
現代では通夜さえも省略してしまうほど、簡素化された「点」
になっています。古代の日本人が現代のお葬式を見たらきっと
びっくりしてしまうでしょう。