息をひきとる
「息をひきとる」
という慣用句があります。ご承知の通り、意味は
「亡くなる」という
意味で多く方が直接、
「死」という言葉を避ける為に
あたりまえのように使っています。
日本は
言霊(ことだま)の文化であり、縁起の悪い言葉を
いかにして使わないかということで「死」に関する言葉をやわらかく表現する
言葉がたくさんあります。
「息をひきとる」とはこの言葉の中でも
代表格の言葉です。
ところで、「息をひきとる」という表現は良く考えると矛盾点があります。
「引き取る」という他動詞は
「受け取る」という意味であり、
息を受け取るのであるから、死ぬことでなく生きることではないかと
思われても言葉の意味から推測するとおかしくはありません。
しかし「息をひきとる」という語源から考えるとこの表現で正解です。
では誰が息を「受け取る」のでしょうか?
息をひきとるという考え方は仏教の教えではなく神道すなわち
日本古来の神様の教え(考え方)なのです。
神道では息を呼吸として捕らえず魂と置き換えたほうが解りやすいかも
しれません。
つまり、肉体の中に入っていた魂を神様が引き取る。
つまり、
肉体上は「死」になるのです。
しかしながら「魂」は生き続けているからこそ、
供養が必要になると
いう考え方に繋がるのです。
「息をしていないと生きているとはいえない。」
これは誰でも理解している「生きている」ということの定義ではないでしょうか。
日本の言葉では「いきもの」=「いき(呼吸)するもの」=「生きるもの」
また古い日本語では
呼吸のことを「い」といい、
「生きている」ということは「息(呼吸)している間」であり、
「い(息)のうち」=「いのち」が「命」の語源と言われています。
「息をひきとる」の語源も「命」の語源も言葉にも魂が宿っているという
「言霊(ことだま)」の精神がしっかりと込められた語源です。
普段何気なく使っている言葉にも魂があるのです。
私たちは少なくとも神様に息を引き取られるまでは精一杯、
息をして「息のうち(命)」のともしびを消すことなくすることが「生きる」と
いうことが使命なのです。
関連記事