2012年08月25日

矢先症候群

 
 多くの方が、特にご家族が、「まさか主人がこんなに早く死を迎えるとは思いませんでした」、「まさか家内がこんな年で旅立つとは思いませんでした」とおっしゃいます。そういう意味で、まさかまさかの連続を見ているという感じがいたします。生というものが延長して、その延長線上に死があると思っていたのが、途中で、ああ自分は、自分の家族は、実は死を背負っていたんだなということを実感するわけですね。
 多くの患者さんやご家族と接していまして、私は一つの症候群を発見いたしました。それは「矢先症候群」という症候群です。これは私が何回か医学の論文に書いた私自身のオリジナルなんです。「矢先症候群」というのはどういうものかと申しますと、二つの例を挙げればすぐにおわかりになると思います。数年前に看取った、それこそ63歳の肝臓がんの末期の患者さんが入院してこられたときに、奥様にお話を伺いますと、「主人は本当に会社人間で、一生懸命会社のために働いてきた。そしてやっと定年で退職して、子供たちも独立して、これから2人でゆっくり温泉めぐりでもしようね、そう言っていた矢先なんです」とこう言われるんですね。もう一人の患者さんは、卵巣がんで亡くなられた、この方も63歳の女性の方です。5人の子供さんがあって、卵巣がんの末期で入院してこられたときに、ご主人が言われました。「家内は本当にいい妻であり、いい母親でした。私が仕事で外で忙しく働いている間に、5人の子供を立派に育ててくれました。ついこの間5人目の娘が結婚をして家を出て、2人きりになりました。今まで苦労をかけたので、これから2人でゆっくり温泉にでもいこうねと思っていた矢先なんです」。これが「矢先症候群」です。これまで、生の延長上に死があると思っていた。しかし定年退職とか娘の結婚とかをきっかけにして、何か一段落ついて、今までできなかったことをゆっくりしようと思った矢先に来るんです。これを私は勝手に「矢先症候群」というふうに呼んでいるんですけれども。皆さん、したいと思われることは、あまり伸ばされない方がいいと思います。忙しい生活をしていますと、なかなか難しくて、少し先送りにされる傾向があります。私もそうですけれども。しかし、したいことを早くしておかないと、「矢先症候群」が待っているかもわからない。今、日本人の3人に1人はがんで死にます。この統計は確かなんですね。ですから、大体自分はがんで死を迎えるだろうなと思っておいてまず間違いはない。
 とにかく生の延長上に死があるのではなくて、われわれは一人一人死を背負って生きているのだということを、患者さんから強烈に教えられました。 



上の引用文は医学博士 柏木哲夫(かしわぎてつお)先生が

平成14年7月12日に行われた中京大学公開講座の要約より

一部抜粋させて頂いたものです。

「定年を迎えたら温泉巡りをしよう」

という矢先に起きる配偶者の死に大きな後悔に直面する人を

「矢先症候群」と呼ぶそうです。

フューネのお客様からも

「老後に2人で住む家を建てる矢先だったのに」

「来年、船旅をする予定だったんだ」

「孫と遊園地に行く約束としていたのに」


といった後悔の言葉をお客様より多数頂きます。




「死」は予告なく突然やってくるものです。

ほとんどの人は頭の中で知識として理解していても感情が他人事なのです。

明日、自分が死ぬかもしれないという想定を持って生きている人は

本当に少ないのです。



矢先症候群にかからない為には、

「気づいたらすぐする」

ということを毎日実践するしか防ぎようがないのです。

一日一日精一杯生きることの大切さをお客様から教わっているのですが、

実践することは難しいことです。













  

Posted by フューネ三浦 at 09:04 │お葬式の知識

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