2010年11月10日

遺体と死体

突然ですが、「遺体」と「死体」との違いはわかりますでしょうか?

私たち葬儀社が取り扱っている物質は「死んだ体」であり、

「死体」なのですが、間違ってもお葬式をご依頼頂いたお客様に

「死体は・・・・」なんて表現は絶対にいたしません

当然といえば当然なのですが、お亡くなりになられた方を

言葉で表現するのに「ご遺体は・・・・」という表現を用います。

もっとも私は「ご遺体は・・・」という表現すらご遺族の皆様には大変失礼な

言葉だと思っていますので「お亡くなりになられた方」と言う

表現やもしくは「お父さん」「お母さん」「おじいさん」

「おばあさん」
もしくは亡くなられた方のお名前を

直接呼ぶように心がけています。

ご遺族にとっては目の前「死」という現実は頭では受け入れられても

心では決して受け入れ難い状態の時がお葬式の前の心情です。

もっとも「心」で死を受け入れる為にお葬式をするという役割があるのですが。




肉体という物質的には「死」は存在しても、「魂は死なない」というのが

各種宗教の基本的な考え方であり、遺伝子学的にも「DNAは不滅」

いう考え方に繋がります。

イギリスの生物学者リチャード・ドーキンスが唱えた「利己的遺伝子」

という考え方では生物の肉体は一つの乗り物で過ぎないのであって、

生き残り続ける為に生物の遺伝子はその乗り物を次々に乗り換える


という理論があります。

これは個体には死があるので、生殖によってコピーをつくり次の肉体を残し

そこに乗り移るということです。

「遺体」とは本来の意味は読んで字のごとく、

「遺(のこ)した体」という意味です。

つまり、祖父や親が遺して逝った「体」は実は私たちなのです。

遺伝子学的には私たちはご先祖さまの「遺体」であり、

私たちが生きているということは亡くなった親や祖父・祖母の命も

一緒に生きているということになります。



ご先祖さまのDNAを受けている私たちがお仏壇やお墓参りをしない

ということは「心」の問題では絶対に考えられないことです。

今の私があるのは「ご先祖さまのおかげ」と言われると何を!

抵抗感を覚える方も「私たちはご先祖さまの遺体」と言われる

ならばどのように思われるでしょうか。

大切なことはこの「遺体」を次の世代に繋げていくことなのです。

そして、その次の世代に繋げていく儀式こそが「葬儀」なのです。








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この記事へのコメント
私が、祖母の『遺体』…

素敵な言葉を、ありがとうございました。

今、祖母と二人、静かな最後の時間を過ごしています。

別れが寂しく、昨日も一日中涙が流れた私でしたが、『自分は祖母の遺体である』と考える事で、気持ちが少し楽になりました。

今日失うのは、祖母の身体であり魂は残る。そして私は祖母の遺体。

大好きだった祖母が自分に残してくれたこの遺体を大切にして、これからを生きていこうと思います。

フューネ様、素敵な時間をありがとうございました。
Posted by pochiko at 2010年11月13日 07:35
pochikoさま
この度の突然の訃報、お悔やみ申し上げます。
「仏縁」を頂きフューネが大切なおばあさまの
お葬式のお手伝いができますことを大変うれしく
社員一同大変誇りに思います。
また、「死体と遺体」の記事をお読みくださって残された遺族の意味がわかっていただけ大変うれしく思います。お葬式は残された遺族の「心」のケアをすることもとっても重要な意味をもっているのです。
今回の記事は実は一ヶ月前に書いた記事なのですが、タイトルも内容もとても重くなかなか公開する勇気がありませんでした。しかし、必要必然で結果的にpochikoさまの大事にタイムング良くアップできたのはやはり不思議な力を感じずにはいられません。おそらくこの記事はpochikoさまの
おばあさまからあなたへの「ファイナルギフト」だと思います。おばあさまの遺体である自分を大切にてどうかこれからも前を向いて生きていってください。
Posted by フューネ三浦フューネ三浦 at 2010年11月13日 12:54
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